OTRAには様々な分野で活躍されている協会員がいます。
今日は子ども達に自然の大切さを伝えている、通称「てっちゃん先生」山田哲弘さんから、気になるお話しです。
秋らしい気候になり、トレイルランニングを思いっきり楽しむにも良い季節になりました。
「さぁ!今週末、山へ走りに出かけよう!」と言う方々にお知らせしたい情報があります。
「ツキノワグマ」という生きものを知っていますか?
ツキノワグマは食肉目クマ科に属し、雑食性で主な食べ物はドングリなどの堅い木の実、ヤマグワなどの柔らかい木の実、昆虫類(蜂蜜を含む)、木や草の若芽や花などが挙げられます。
本州と四国の33都道府県に生息地とし、主にブナやミズナラに代表される落葉広葉樹林に生息しており、その分布と岡山県を重ねると主に県北部がその生息域になりますが、近年では県中部での出没が報告されています。
岡山県にどのくらいの数のツキノワグマ(以下、クマという)が生息しているかご存じですか?
岡山県によると、推計では179~522頭の幅で生息しており、計算上で最も可能性の高い中央値321頭が2019年末の推計数という調査結果がでています。
さて、今年のクマの出没状況はどうなっているでしょうか。
一例として2020年9月7日に美作市で、4~7月の出没件数は26件と報告されています。
前年同期間は24件、ただし前年11月の出没報告が54件と急増したため、市は住民に注意を呼び掛けています。
また吉備中央町や和気町、赤磐市などでもクマの出没が報告されています。
このように県中部から南部の山に出かける時でもクマに出会うかも…と言う心構えが必要になってきます。
さらに岡山県の調査によると、今年はクマが食べているドングリのうち、高地に多いブナが凶作であるとの結果が出ています。
クマが特に好むと言われているブナが凶作であることを考えると、山奥に生息しているクマがエサを求めて動き回り、人里付近や今まで出没しなかったエリアまで出てくる可能性が高くなります。
冬眠の準備のため一生懸命エサを探しているクマと私たち人間が山でばったりと出会い、人が襲われる事故が発生したら…。襲われた人も不幸ですが、襲ったクマも有害駆除の対象となり不幸の道を歩んでしまいます。
このような不幸を呼ばないために、私たち人間が山に入るときはその存在を熊鈴などで知らせたり、クマの活動が活発となる日の出・日没前後や霧の日など薄暗い日には極力山に入らないことなどを心掛けていただければと思います。
そして最悪、出会ってしまった時のためにクマ撃退スプレーをすぐ取り出せるところに準備しておくと更に良いでしょう。
山は私たち人間だけのものではありません。クマを含めた多くの生きものが暮らしている場所です。
自然の中に「お邪魔します!」の心でトレイルランニングを楽しんでいただき、自然の素晴らしさを「五感」と「心」で感じていただけると最高に嬉しいです。
山田哲弘
参考資料:米田一彦著「生かして防ぐクマの害」(農産漁村文化協会発行)、山陽新聞記事(20200412、20200907、20201005)