「薬やサプリメントについて」 第5回 そうだ!薬局に行こう!

薬剤師の立場からランナーへの熱いメッセージを書き綴って頂きましたが、最終の5回目です。

ランニングに向かう気持ちは人それぞれ、ここに書かれた言葉の数々が、全ての人に当てはまるとは思いません。
しかし、これが皆さんにとって何かのキッカケになれば幸いです。

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  「薬やサプリメントについて」

 第5回
 そうだ!薬局に行こう!

これまでに4回のコラムを続けてまいりましたが、今回第5回目で最終回となります。
そこで今回は、総括的な意味合いもかねて

・薬とサプリメントの正しい使い方
・ドーピングについての基本的な考え方
・薬局の取扱説明書

の3つのお話を書きたいと思います。

初回のコラムの「痛み止めと胃薬」でも触れましたが、薬は使い方によっては毒にもなります。周囲の使用法に流されず、正しい知識を得てください。

最近で言えば、貧血に対する対処法が問題となっていました。
着地の多いマラソンやトレイルランニングのような競技は、「足底で赤血球が潰される」などと言われていて、他の競技に比べて貧血の割合が高くなっています。
慢性の貧血になっているトップランナーは多いと思われますが、これを悪用して、鉄分の注射により酸素運搬能力を人為的に高めて競技能力を上げることもされていました。

この行為は競技能力が向上するものの、ドーピング禁止行為ではないので長い間放置されていましたが、弊害が多く、選手の健康に大きく影響がでるため、ようやく昨年度に問題視され、高校駅伝では対策として注意喚起が出されるようになりました。

だからと言って、口から摂る鉄分に問題が生じるわけではありませんので、激しい運動のあとは適切な量の鉄分を摂ることはとても大切です。使い方をわきまえて必要であればサプリメントも考慮に入れていいと思います。

薬だけでなく、そのサプリメントについても同様に正しい知識が必要ですし、国立スポーツ科学センターからはサプリメントに関して否定的な見解が出ています。 

やっぱり「栄養の基本は食事から」です。
どうしてもこれが維持できない場合にのみ、サプリメントに頼るという考え方で間違っていないと思います。

運動後の栄養補給も通常なら食事から。遠征後の栄養摂取が不十分になる場合などは、オレンジジュースや紙パックのプロテインなど持ち歩くのもありでしょう。

次にドーピングについてです。

一般競技者にとってドーピング検査は無縁のものだと思います。ドーピング検査を受けるということは一流の証ですし、抜き打ち検査を受けることはトップオブトップの称号と同じ意味合いがあると考えています。

私には関係ないや・・・で終わる話なのかもしれませんが、禁止されている医薬品を使って自己ベストを出した時に心から喜べますか?
おそらく禁止物質を使った事すら理解していないランナーも多いと思いますが、それを知った時に、その記録はあなたにとって意味のないものと感じませんか?

多くのファンランナーはイヤホンやヘッドセットで音楽を聴きながら大会に参加しています。これが競技者登録をしている者にとって違反だということをどれくらいの人が知っているでしょうか?それと同じことだと僕は考えています。

私の同級生は以前
「ドーピングどんどんやったらいいと思うけどなあ・・・」
と僕に言ったことがあります。
「その方が高いレベルの戦いが見られる」というような意味合いだったと記憶しています。

なぜドーピングがいけないのか?

4つの理由があるのですが、その中の1つに「選手自身の健康を害するから」という理由があります。

ドーピングを許してしまうと、必ずエスカレートしてきます。
チームのため、会社のため、さらには国のためと、薬を使って競技能力の向上に図ることでしょう。

そうなると通常の使用量を超えての投与となるのも必定。
そして選手に副作用の兆候が見られるのも不思議ではなくなります。
あまり知られていませんが、ドーピングによって過去に死者まで出ているのです。

それにも関わらず友人はドーピング容認の発言をしましたし、僕と話したある記者は同様の発言をし、さらには「健康を害してでも勝ちたいヤツはいる」とまで言いました。

命を落とすようなことがあってはいけません。そのためにドーピング検査があるのです。
ドーピング・ゼロを徹底するのであれば、公平を期すために、例え意図しない禁止物質の使用であっても罰せられるべきなのです。
以上、正しいお薬の使い方でした。

最後に皆さんにお伝えしたいメッセージです。
サプリメントについての考え方、アンチ・ドーピングに関する相談などは、本来は薬局で聞いて欲しい内容です。

あなたのお住まいの近くの薬局にふらっと立ち寄ってみてください。
以前は「街の科学者」と言われていた薬剤師です。
今ではお医者さんでもらった「処方せん」を受け取ってお薬を渡すだけのように思われているかもしれませんが、普段の生活での悩みや相談を聞いてくれるところなのです。 
中にはコミュニケーションを取るのが苦手な薬剤師もいるかもしれませんが、皆様の健康を願うのは薬剤師にとって当然のことなのです。

岡山県トレイルランニング協会理事 立花 義章
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